2ntブログ

JUNOの風景

朝刊
08 /29 2011
信子「JUNO面白すぎる!なによこれ!」
益利「テーマが16歳の女子高生が妊娠する話だと言うから重い話かと思ったら、軽いわけじゃないけど逆にリアリティのあるドラマだな、これ」
信子「そうなのよ。大抵学生が妊娠したドラマというもう発狂するかのような大騒ぎがある意味定番だったけど、学生時代に妊娠したことは無いけど、人間そこそこ生きていれば大きなトラブルの一つや二つはあるわけだけど、案外そういうトラブルの時って事の重大性の割に自分や周りは冷静に淡々と対処してたりする。その慣れない対処に追われている間はどこか客観的だったりするし、全部処理が終わってから後になって冷静になってとんでもない事になったもんだと後悔とかするじゃない?このJUNOのジュノって女の子も妊娠した時、検査薬を三つも試して事実を受け入れたくない心情はあるものの、どこかあきらめの境地というか他人事感がある。これが下手なパニックするドラマよりもリアルよ。しかも始めは堕ろそうと病院に行くけど、中絶反対を訴える知り合いの女の子の看板にはなんの影響も受けないけど、何気ない胎児には爪が生えてるって言葉が引っ掛かったり、病院の受付の人が気に入らなかったりとそんな些細なことが心に引っ掛かって、堕ろすことを止めて産むことを決心してしまう。これはすごい描写よ。まさに一杯一杯の人の心の中ってそんな感じだもの。心を一杯にしてる出来事とまったく関係無いことで決めてしまうの。わかるわ~」
益利「しかも産むと決めてからも、そんなに重い事実と言うよりも大きな腫れ物が出来たくらいな感じで普通に生活をしてる。友達と遊んだり、学校通ったり、この普通感というか案外周りも普通にされると受け入れちゃうもんだしな。妊婦の女子高生が学校通うなんて描写を日本の映画がやるとすると周りはやたりちやほやしたり、まさに主人公扱いされるんだろうけど、それがないのが逆にリアルな感じがするな」
信子「しかもその学校生活だけど、妊娠の原因になった男の子とも妊娠してるのにいまいち微妙な関係だったりとかね。他の女の子と仲良くするのを嫉妬したりとか。あまりにもジュノが自然体だから、お腹の子供の父親なのに責任がどうのとかにならずに、付き合う前の男女のような距離感が不思議でありながら納得させられる状況というか、この関係感がカオスでありながら、わかるわかるというか。いやこれ本当にスゴい物語だよ」
益利「あと産むことを決めてからの家族の反応やお腹が大きくなっていく過程での家族の強力感とか、産むけど養子に出すことをさっさと決めて、その相手まですぐに決める展開もスゴいよな」
信子「養子先をすぐに決めるのはわかるな。産んだ後のことまで考え始めたら精神的にキツいから、どんどんすべきことを決めてしまう方が精神的に楽なんだと思う。車同士で事故起こした時に相手が悪いんだと罵るよりも警察や保険屋や仕事先に連絡してしまうような感じというか。まず処理すべき事を見つけて処理しちゃうのよね。それにその方が気が楽というか精神的に安定させられると言うか。まあ一種の現実逃避なわけだけど。だからジュノも養子先を決めて、その養子先に子供の成長を報告に行くという仕事をすることでどこか精神的な安定をさせてたんだと思う。ジュノがお腹の子供に対して冷たく見える表現とかしてるのは間違いない無く現実逃避の一つだと思うわ。ジュノの淡々としてるように見える妊娠生活って逆にリアルなのよ」
益利「この映画って若い子の妊娠問題に対する一つの答えだと思うな。妊娠しないようにという教えはいくらでもあるけど、本当に必要なのは注意していても注意し損なっていたとしても結果として妊娠してしまった子達への一つの慰めになる物語だと思うけど、そういったドラマでこれというものはないからな」
信子「この映画こそ思春期の女の子に見せるべきよ。この物語を知ってるお陰で救われる子もいると思うし、そもそもお腹の大きな子が高校通っちゃ行けない風潮ってあらためて考えてみるとおかしいわ。学校はそもそも勉強する場所であるわけで、妊娠したら退学したり停学するのってよく考えるとおかしいもの。出産する時は休まなきゃならないけど、妊娠中は別に高校通っていても問題ないわけよ。そもそも妊娠は学校の問題じゃなくて個人の問題なだけでその個人の問題を理由に学校通えないなんておかしいわ。この視点はジュノが妊婦のまま学校通ってるシーン観るまで気付かなかった。まさに文科省の洗脳が解けた瞬間だわ。と言うかこんなところまで文科省の洗脳があったなんて気付かなかった。文科省こえー」
益利「そういや確かに妊婦女子高生って社会的に悪なようなイメージが深層心理にあったことに気付いたな。若い妊婦がみんなジュノのように堂々としていたらもっと色んなものが見えてくるかもな」
信子「アメリカでもジュノは特別だろうから、日本じゃなおさら無理よ。まあでも若い子の妊娠に対する価値観に新しい見方を教えてくれる映画だわ」
益利「しかしよくこの映画見つけたな」
信子「もともとマイレージ、マイライフ観て気に入って、その後にサンキュー・スモーキング観て気に入って、この二つの監督が同じ人だと気付いて、残りの一本でアカデミー賞受賞してるこのJUNOを観てみたいと思ったのがきっかけよ」
益利「へえ、結構当たりの多い監督なんだな」
信子「それで調べてみたら、この監督実は二世監督なのよ。しかも父親はあのゴーストバスターズの監督なのよ。親子揃ってすごい監督とかビックリよ」
益利「そりゃすげえなぁ」
信子「むしろあたし的には息子の方がスゴい監督ってイメージなんだから、さらにビックリ」
益利「サンキュースモーキングとこのJUNOは確かにスゴいな」
信子「しかもその二本はクチコミで上映館数を増やしていったっていうのが二世っぽくないというか。信用できる監督ね」
益利「しかし、この映画評価出来るアカデミー賞はすごいな。埋もれた名作を評価するからこそ信用されるわけだ」
信子「どっかの国の日本アカデミー賞とは大違いね」

黒崎銀二

Twitter:Ginji_k
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2007年8月31日開設
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