部屋の白い壁著者 白神唯
白く大きな壁に背をもたれて人形のように座っているのが好きだった。何も考えずただ座ってボーと天井を眺める。なんとなく満たされた気持ちになる。背中に白い壁、天井も白ければ文句はない。綺麗で神聖な気持ちになれるのだ。いつの頃から好きな色が白になったのだろう。なんとなく、好きになっていた。
「白、だよね・・・・・・」
広い何もない部屋で一人、背中に壁の冷たさを感じていると胸の内から安心感が沸いてくる。小さな子供が母親に包まれているような安心感。
部屋には大きなソファとパイプベッドがあり、どれも私の好きな物だ。他には好きな作家の小説が疎らに部屋の隙間を埋めている。そんな疎らさが自分の感性では受け入れられる。
簡素な部屋だった。テレビもオーディオもない部屋。ただ白く広い壁があればいい。
実家に居る時も家の中では何もない畳の部屋が好きだった。祖母の部屋から襖を開け放して外を眺めているのが何よりも好きだったのだ。そこに流れる風や日の光、鳥の声を静かに聞いているのとても好きで、落ち着いていられた。
私は昔からよく変わっている、と言われる。
「広子は変わっているよね」と高校の友達にはよく言われていた。
「そう?そうかもね」
「否定くらいしなよ」